犬のフケは珍しい症状ではありませんが、病気のサインとしてあらわれることもあるため適切に対処することが大切です。この記事では、犬のフケの原因や病気の可能性、対処方法などをご紹介します。

犬のフケとは？

フケとは、新陳代謝によって皮膚の表面から剥がれ落ちた古い細胞のことです。犬の皮膚は通常約3週間のサイクルで生まれ変わります。そのため少量のフケがみられるのは自然なことですが、フケの量が増えたりベタベタしたりするときは、病気の可能性があります。

犬のフケの一般的な原因は？

犬のフケが増える一般的な原因は、皮膚の乾燥です。皮膚の水分が失われると新陳代謝が乱れ、成熟していない角質まではがれ落ちてしまい、その結果フケが増えます。犬の皮膚が乾燥する主な原因として、空気の乾燥、シャンプーのしすぎ、シャンプーの種類があっていないことなどが挙げられます。

犬のフケの原因となり得る病気は？

病気が原因で皮膚のバリア機能が低下したり、新陳代謝が乱れたりしてフケが増えることもあります。犬のフケの原因となり得る主な病気は下記のとおりです。

膿皮症

健康な皮膚にもともと存在しているブドウ球菌などの細菌によって引き起こされる感染症です。アトピー性皮膚炎がある犬や免疫力が発達途中の子犬、基礎疾患や加齢などで皮膚のバリア機能が低下している犬で起こりやすいとされています。フケのほか、皮膚の赤みや湿疹、脱毛、かさぶたなどの症状があらわれます。

真菌症

カビなど真菌によって引き起こされる病気の総称で、なかにはフケが出るものもあります。フケの症状がみられやすい代表的な病気は以下2つです。

●皮膚糸状菌症

土壌や植物、動物の皮膚などに広く存在している皮膚糸状菌というカビによって引き起こされます。フケ、皮膚の赤み、脱毛、かさぶたなどの症状があらわれます。一般的に痒みは少ないですが、著しく痒がるときもあります。

●マラセチア皮膚炎

カビの一種であるマラセチア菌が増えると、皮膚の赤み、湿疹、べたつき、脂っぽい独特の臭い、フケなどの症状があらわれます。脇や首など皮膚が重なっていて、通気が悪く皮脂がたまりやすい部位に多くみられます。

寄生虫

皮膚や毛穴に寄生する寄生虫が原因でフケが増えることもあります。寄生虫がいても数が少なければ基本的に目立った症状はあらわれませんが、過剰に増えることで炎症が起こります。フケを伴う主な寄生虫症は以下3つです。

●ツメダニ症

ツメダニが皮膚に寄生して炎症を起こす病気で、腰から背中にかけて大量にフケが出るのが特徴です。子犬は成犬に比べると症状が強く出る傾向があり、皮膚の赤み、かさぶた、脱毛を伴うこともあります。

●疥癬

ヒゼンダニによって引き起こされる病気です。最初は耳や肘、お腹、飛節（後ろ足のかかと）など毛の薄い部分に強い痒みや赤い発疹があらわれ、しだいに全身に広がっていきます。掻きむしることで脱毛、かさぶた、フケといった症状もみられます。

●毛包虫症

毛穴に寄生するニキビダニが原因の病気です。フケ、皮膚の赤み、脱毛といった症状が、体の一部または全身にあらわれます。全身性の場合は症状が強く出やすく、フケも多くなります。

脂漏症

寄生虫や真菌の感染、基礎疾患などが原因で皮脂の分泌に異常をきたす病気です。皮脂が過剰に分泌される脂性脂漏症では、ベタベタしたフケ、痒み、独特の臭いがあらわれ、多くの場合外耳炎やマラセチア皮膚炎を合併しています。皮脂の分泌が不足する乾性脂漏症では皮膚がカサつき、乾いたフケが大量にあらわれます。

アレルギー

ある特定の物質に対して、免疫が過剰に反応することで引き起こされます。主な症状は皮膚の赤みや痒みですが、皮膚のバリア機能が低下して乾燥したり、掻きむしったりすることでフケが出ることもあります。犬で代表的なのは食物アレルギー、ノミアレルギー、アトピー性皮膚炎です。

ホルモンの病気

ホルモンバランスが崩れることで皮膚の新陳代謝も乱れ、フケが増えることがあります。ホルモンの病気は中高齢の犬に多く発症する傾向があります。代表的なものは以下2つです。

●甲状腺機能低下症

全身の代謝に関係する甲状腺ホルモンの分泌が低下する病気で、中型犬や大型犬に多いとされています。脱毛や細毛など毛の変化、元気がない、皮膚の肥厚や色素沈着、フケなどがみられることがあります。

●副腎皮質機能亢進症（クッシング症候群）

副腎から分泌されるホルモンが過剰に分泌される病気です。下垂体の良性腫瘍が原因の場合が多く、多飲多尿、食欲増加、左右対称性の脱毛、フケなどの症状があらわれます。

犬のフケで受診する目安は？

乾いたフケが少量出る程度でそれ以外の症状がなければ、自宅で様子をみてもかまいません。ただし下記の項目に当てはまる場合は病気の可能性もあるため、早めに動物病院を受診しましょう。

• 痒みや脱毛などフケ以外の症状がある
• フケが床に落ちるくらい多い
• フケがベタベタしている
• ケアしてもフケが改善しない
• 食欲や元気がない

家庭でできる犬のフケの対処法

フケの原因が乾燥で症状が軽い場合は、家庭でのケアで改善することもあります。下記の方法で対処しましょう。

シャンプーで体を洗う

フケが出ているときは、シャンプーで体を洗って皮膚を清潔に保つことが大切です。ただシャンプーは皮脂まで洗い流してしまうので、使いすぎると皮膚が乾燥してフケの増加につながることもあります。シャンプーの使用は月に1～2回程度にし、シャンプー後は犬専用の保湿剤を使って保湿するようにしましょう。

ブラッシングをする

ブラッシングをすると、毛についたフケを取り除けるだけでなく、皮膚の新陳代謝が促されることでバリア機能が整い、フケの改善につながります。ただしやりすぎると皮膚が傷ついてフケの症状が悪化することもあるので、犬種にあったブラシを選び、1回あたり10分程度で終わらせるようにしましょう。

食事内容を見直す

フケが出ているときは、皮膚の健康維持に必要な栄養が不足している可能性があります。特にタンパク質や良質な脂質、ビタミン、ミネラルは積極的に摂取したい栄養素です。食事内容を見直し、年齢や犬種にあわせて適切な食事を与えるようにしましょう。

犬のフケの予防方法

犬のフケの予防には、皮膚の健康を保ちバリア機能を維持することが大切です。具体的な予防方法は下記のとおりです。

適切な方法でシャンプーをする

前述のとおり頻繁にシャンプーをすると皮膚が乾燥するため、フケが出やすくなります。またシャンプーの種類があっていなかったり、すすぎが不十分だったりすると、皮膚がダメージを受けることもあります。愛犬にあったシャンプーを選ぶ、シャンプーは月に1～2回くらいを目安に行う、すすぎ残しがないようにしっかり洗い流すことを心がけましょう。

シャンプー後は保湿する

犬の皮膚は人間よりも薄くて乾燥しやすいため、シャンプー後は保湿剤でケアするようにしましょう。犬専用の保湿剤を使ってしっかり保湿してあげられるといいですね。

部屋を加湿する

空気が乾燥する冬場はもちろん、夏場でもエアコンを使用すると湿度が下がるため皮膚が乾燥しやすくなります。加湿器などを使用し、部屋の湿度を40～60％くらいに保つようにしましょう。

こまめにブラッシングをする

ブラッシングには、汚れや抜け毛を取り除き、皮膚のバリア機能を保つ役割があります。肌トラブルがなければ1日10分程度を目安に、こまめにブラッシングをしましょう。

栄養バランスの整った食事を心がける

フケを予防するには、体の内側からのケアも大切です。対処法でご紹介した栄養バランスを参考に、普段からバランスよく栄養が摂れるように心がけましょう。

犬のフケの相談はオンラインでも

フケがあるからといって必ずしも病気とは限らないので、愛犬のフケが気になったとしても「病院に連れて行くほどではないかも」と受診をためらうこともあるかと思います。そんなときはペットのオンライン診療サービス「ペットドクター」が便利です。自宅からオンラインで獣医師の診察を受けることができますよ。全国どこからでも利用できるので、困ったときは検討してみてください。